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ハイチ:なぜ米軍が指揮をとるのか?→ハイチのコメ問題へ

2010年01月22日 23:47

只今、こちらの時間は金曜日の夜12時前。
ワーナー・チャンネルでは、ハイチ救済ライブ「Hope for Haiti Now」を生中継の真っ最中です。

この、「Hope for Haiti Now」は、MTVが中心となって作ったハイチ救済イベントで、英米を中心とした、BONO、COLD PLAY、マドンナ、シャキーラ、スティービー・ワンダーなどなどなど数えきれないアーティストが参加しています。音楽だけでなく、ジュリア・ロバーツ、スピルバーグなどなど多くの有名人がメッセージを伝えています。

歌はituneストアで1曲$0.99で購入できるほか、番組中には電話・テキストメッセージ等で寄付を受け付けています。さらに、番組中に受付電話に電話すると、なんとアーティストが電話に出ることも。先ほども、スピルバーグが電話のおばちゃんと話していました。

この手の、エンターテイメントを活用した動きは、アメリカ・イギリスは本当に早いですね。
できれば、いつもエンターテイメントに集中投下していてくれれば…と思ってしまうほどですが。


アメリカは今回、大変な規模の軍隊を投入して救援にあたっています。空港のコントロールはじめ、各国の救援のとりまとめ・総指揮も米軍が行っているようです。
なんでアメリカがそんなに?と、ライブを見つつ記事を探していたら、NEWSWEEKのこんな記事を見つけました。
読者のコメントのやり取りも含め、興味深いのでご紹介。

NEWSWEEK: 「ハイチの混沌に効果的に対処できるのが米軍だけなのはなぜ?」

この記事によると、つまるところ「これだけの規模で即対応できるのは世界で米軍だけ」とのこと。
米軍と、セーブ・ザ・チルドレン、CARE、オックスファムなど大手NGOがまず救助に入り、米軍がインフラを作り、NGOが現地オペレーションにあたるということになっているようです。

興味深いのは、この記事への読者のコメントです。
アメリカが「僕ちゃんだけができるんだもん」となることを危惧する意見もいくつか見られます。全体的には「人道的には助けることには反対しない。でも、『救助のあり方』には要注意」といったところでしょうか。

「これは救援ではなく、占領ではないのか。」
「なぜオバマ大統領がハイチ国民に向けてスピーチするの?」(確かに・・・。)
「他国を助けるのが悪いとは言わないけど、アメリカ国内の貧困や社会保障の問題が先では。」
「たとえ米軍だけが対応できる規模であり、能力があるとしても、指揮は国連に渡すべきではないか。
異なる意見を聞く耳を常に持つ必要がある。」
といったものもありました。これに対し、
「でもアメリカだけができるんだからしょうがねーだろ!ハイチが貧乏になったのはスペインとフランスのせいでアメリカじゃねーよ!」
という、キレぎみの反論も。

また、上記とは異なり、
「助けが必要なのは分かるが、なぜそれがわれわれの国(つまりアメリカ)でなくてはならないのか?米軍はすでにオーバーワーク気味になっているのに。」
という立場での意見も。

さらに、「ハイチが貧乏なのはアメリカのせいじゃねーよ!」のコメントを見て、「じゃあいったい・・?」とさらに検索を続けたところ、どうやら「アメリカのせいじゃねーよ!」とは言い切れない事情もあるようです。
ちょっと長くなりますので、お時間とご興味のある方はお付き合いいただければ。


1990年代、ハイチはIMF(国際通貨基金)や世界銀行からの融資を受けるため、いわゆる「構造調整政策」に取り組みました。構造調整政策というのは、簡単に言いますとIMFや世銀による「これだけのことをやれば、お金を貸してあげるよ」という条件みたいなものでして、多くの国で累積債務問題が持ち上がった1980年代からしばしば行われてきたものです。
構造調整でやらなくてはいけないこと、というのは、主として自由市場の仕組みを整えることでして、国営企業を民営化するとか、金融を自由化するとか、貿易を自由化するとか。

この構造調整がもたらしたものについては数々の研究がありますが、特に途上国の貧困層にとっては「害があった」とするものが少なくありません。

で、ハイチに戻りまして。ハイチでは、構造調整政策に基づき、貿易の自由化を行いました。
1980年代までは80%以上の食料自給率を誇ったハイチですが、貿易自由化により農作物の輸入関税を大幅に引き下げることになります。その結果、米国をはじめとした国々からの安い食料が大量に輸入され、もともと零細農家がほとんどであった国内の農業は大きな打撃を受けました。そして、地方で農業を営む層の多くは貧困層であったわけです。都市部では、安い食料を買うことができるという恩恵にあずかる人もいた一方、地方の貧困農家は暮らすこともままならなくなったわけですね。

たとえば、最も影響があったとされるコメ。
ハイチではコメは長らく食べられている穀物です。
1995年、それまで35%の関税であったものが3%まで引き下げとなりました。

その結果、アメリカからの輸入米が急増。オックスファムの2005年のレポートによると、「世界最大の精米販売農協である米国・アーカンソーのライスランド・フーズ社の利益は、国際通貨基金(IMF)の圧力で95年にコメ関税を35%から3%に削減することを強要されたハイチなどへの輸出の50%の増加のお陰で、02年から03年に1億2300万ドル増加した」そうな。

一方のハイチ農家はと言いますと、政府から数々の助成を受けているアメリカのコメ農業と異なり、もともと稲作に適した土地が少ない上にインフラ設備も少なく、生産にあたっての政府の援助などあるはずもないので品質の上でも競争することは難しく、生産量は減る一方。多くの農家は稲作をやめざるを得なくなりました。
しかし、地方の弱小農家にとって、代わりの仕事を探すのはとても困難です。その結果、多くの農家が極度の貧困に陥りました。他国で違法就労する人々も出たようです。

ただ、ここでちょっと注意しておきたい点があります。この米の貿易自由化が始まる以前から、主としてイネの病気により、ハイチの米生産量は減少傾向にありました。で、国内のコメ価格は高騰気味。輸入しないと、国民は米を買えなくなる…という事態でもあったのです。ちなみに、イネの病気は、稲作農家に十分な技術や資源がないことに起因していたようです。つまり、天災ではなく人災ともいえるわけですね。
(このあたりはコチラの記事をどうぞ。英語)

さらにさらに、その後2008年に起きた世界的な食料価格の高騰。コメの価格も高騰します(BBCのコチラの記事をどうぞ)。これにより、ハイチの輸入米も価格が高騰。国民の78%が1日2ドル以下で暮らすハイチ(UNDP,2009)にとって、価格が高騰した輸入米など買えない。でも、代わりになるはずの国内の農業は瀕死状態。
深刻化した事態は暴動・略奪にまで発展、首相が解任される事態へとなりました。


もちろん上記以外にも、ハイチの歴史的背景などさまざまな要因があり、それらが複雑に絡み合ってのことではありますが、ざくっと見ると、コメの貿易自由化により儲かったのはアメリカ、泣いたのはハイチ、それも貧困層。という風にも見えるわけです。
さらに皮肉なことに、今回のハイチ地震の被害者に対し、アメリカの稲作農家が「米の寄付」を申し出ているそうです。


貿易自由化は、「それぞれの国が、得意なものを作って、お互いに交換すれば、みんなが利益を得る」という理論に基づいています。コメ作りが得意な国は米を作る。機械が得意な国は機械を作る。貿易を自由にすれば、みんなが「よりよいもの・安いもの(=競争力の高いもの)」を自由に買えるので、各国は自然と競争し、「勝てるもの」に力をいれるようになる。そうすれば、最後にはみんなが勝てるようになる・・・と、まあ簡単にいうとそういうことです。

が、上記のハイチとアメリカのように、持っている技術力が違う、投資できるお金が違う、違うことづくしの状況では、そもそも競争になってません。よーい、どん!のスタートラインがすでにトラック何周分も違うわけですから、どんなに走っても、ちょっとやそっとじゃ到底追いつけないわけです。
少なくとも、スタートラインをできるだけ揃えて走り始めないと、本当にどっちが強いのか?は測れないですね。
仮にスタートラインがそろったとしても、超大国アメリカと弱小国とでは、一方のコースは整備されたトラック、もう一方にはいろいろ障害物がある、みたいな状態なわけで、やっぱり競争にはならないし。
かといって、代わりに「勝てるもの」もしくは「勝てそうなもの」がハイチにあるのかどうか…というと、?ですね。

「後からみれば」で恐縮ですが、80年代~90年代にハイチでコメの供給が減り始めたときに、必要だったのは「ハイチ国民が安いコメを買えるように貿易自由化すること」ではなく、ハイチ国内の農業を強化するための支援であったようにも思えます。あるいは、自由化したときに「勝ちいにける」産業を育てる支援とか。
それなしの「いきなり自由化」は、「相手が負けるとわかってるからやる」みたいな感じで、ちょっとやっぱり、ズルい気はします。

安くて良いものが買えるのは消費者としては確かにありがたいし、競争により効率化が進むのもよいことのようにも思いますが、この競争そのものに参加できない人たちがいっぱいいることはなかなか意識できないものです。

今回の地震について、アメリカが大きな役割を果たしていることは確かで、多くの方々が素晴らしい動きをしているのも確かです。が、こういう時こそ、目にする一面だけに偏らないよう、強者のリクツに陥らないよう、注意が必要なのかもしれません。


ハイチの米事情については、2004年のアメリカン大学のレポートに詳しいのでさらにご興味のある方はコチラをどうぞ。

ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。あなたに拍手!
この手のネタは、書くのが難しいですねえー。結局、書き終えたのは次の日になってしまいました…。
これしかやってない週末でした。





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コメント

  1. 絵羽字音 | URL | B25bDWbI

    コメと貧困と日本

    ハイチの震災から貧困の理由→国際社会からの圧力などまで一気に解析されているのは素晴らしいですね!現実は誰かの書いたシナリオ通りに動くわけではありませんが、現実に起きたことが解析された通りの筋書きだったということはほぼ確かだと思います ^ ^ 。

    日本のコメ自由化は次のWTOラウンドの一つの焦点ですが、風穴があいたきっかけは1993-94年のコメ緊急輸入に遡ります。それまで国内農業の保護を理由にコメ輸入を締め出して来た日本は、ただでさえ国内在庫が最低レベルになった1993年に再度の凶作に見舞われ、食糧確保を名目に一転して250万トン超のコメを輸入します。この量は世界のコメ貿易量の4分の1で、もちろん市場価格は一瞬にして倍になりました。中国は(長粒種に比べれば)日本人受けするコメを高い価格で日本に売り、タイなどから安いコメを輸入して国内の需要を満たしました。ちなみに、タイの長粒種はべたべたしたコメに慣れている日本人受けしないだけで、世界的には「高品質米」です。

    その時、迷惑を被ったのはコメを輸入に依存していた南アジアの貧困国。主要食糧の価格が2倍になったのですから国家の一大事です(オイルショックみたいなものだったのではないでしょうか)。一方で日本の消費者は輸入米(当時は国産とのブレンド米として市場に出てましたね)を「まずい」と打ち捨て、国産米を倉庫にたくさん隠していた業者も後で見つかりました。国民に消費されなかった輸入米は、日本の港で税金を消費してただ寝た後、数年後に食糧援助として再度海外に旅立ちました。

    当時の日本政府に「輸入しない」という選択肢があったのか?消費者は世界のコメを感謝の心とともに受け入れることができたのか?メディアが国内のコメ不足だけではなく、国際社会への影響まで鑑みた批判・論陣を張ることは可能だったのか?日本国内のコメ流通は何に対して責任を果たしていたのか?それらの総体としての下品さは誰の責任なのか?もし国連のような組織がこれらの視点で介入してきたら我々は何と答えたのか?などの問いは、世界に出る日本人の一人としては、他国民から言われる前にしておいても良い自問かもしれません。日本には資金も自由も教育も民主主義も強い企業もあったのですし。

    レスターブラウンが「誰が中国を養うのか」を書いたこの時期、今のような「すべてが中国に吸い込まれる」時代を私はリアリティをもって想像できませんでした。かの地の体制を実業として間近に見ていたからこそ、夢物語に聞こえました。今回ブログにお書きになったような「振り返り」は、だからこそとても大事だと思います。長文失礼しました ^ ^/

  2. neco | URL | -

    Re: コメと貧困と日本

    絵羽字音様> コメントありがとうございます。とても勉強になりました。なるほど日本のコメ事情はそのようなことになっていたのですね。日本のこととなると、客観的に見るのが難しく、ついつい避けがちになってしまうので、良い問いかけをいただき自省いたしました。
    日本はまだまだ国際社会=欧米諸国、主としてアメリカ、と見て、彼らにどう見られるかを考えるのが精いっぱい、という印象はあり、国際社会の中での役割や影響を「全体」で捉えるまでには熟していない感じはします。
    それにしても、タイ米はまったく種類の異なるものなのに、日本米と「同じ土俵で比べる(そして「まずい」と判定する)」こと自体ちょっと的外れな印象を当時持った記憶があります。個人的には、タイ米は当時初めて購入しましたが、好きで結構よく買ってたことを思い出しました。

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